106 「Well-beingと精神的フレイル」 近年グローバルに「ウェルビーイング (Well-being)」が行きわたりつつある。 「身体的な健康」、「精神的な健康(脳 と心)」、そして「社会的な健康」を維 持する事による「幸福感」を享受する 事が、真の目的であるとの認識である。 フレイル(虚弱)は高齢者に限らず、 全世代において発生する事が明らか となり、フレイルを予防するには適度な 「運動」と「栄養バランス」の取れた 食生活、「社会活動への参加」が重 要とされている。 身体的フレイル要素に匹敵する重 要な視点が「精神的フレイル」であり、 それは加齢のみならず、ストレス、疲 労・過労から発症して脳機能・記憶 力や集中力の低下やストレス障害、睡 眠の質の低下などを引き起こす事に なる。科学的なエビデンス、機能のメカ ニズムの理論的根拠と安全性を有す る機能性食品にフォーカスをあてて、 身体的・精神的機能を向上し、その結 果ヒトの健康の維持増進、予防医学や 「一向に縮まらない平均寿命と健康 寿命の差」の改善が実現できた結果 により、ウェルビーイングは達成される と考えている。 「ブレインフードとムードフード」 高齢者の認知症に限らず、「中高 年の自殺」「サラリーマンのうつ病」 「自律神経失調症に悩む女性」「キ レる若者」「ADHD(注意欠陥多動 性障害)の児童」「PTSD」といった脳 機能障害に起因する社会問題として とらえるべき疾患が急増している。そ の背景には食事、運動、休養のバラン スが劣悪化している環境やストレス の関与が指摘されている。ストレスが 継続して負荷されると、認知症同様、 脳の神経細胞が破壊されて いき、それが精神面をも揺る がし、多岐に亘る精神症状 や異常行動を誘発すると考 えられている。 いずれにしてもこれらの脳 機能障害や精神疾患に対す る決定的な治療法は今だに 存在せず、どのような疾病で も悪くなってから治すことより も「予防」することの方がより 重要であることは、脳機能障 害や精神疾患の場合でも全 く同じである。 機能性表示食品の中には 「ブレインフード」に包含され る、脳機能や自律神経系作 用との関連が深い、「ムード フード」(情緒改善食品)の 開発が進展してきている。 情緒改善は「攻撃性」「多動性」 「うつ状態」「不眠症」などとの関連 性も深く、今後「ムードフード」市場性 は巨大となると予測できる。ストレス社 会の中、薬ではなく食品という自然の 方法で、また手軽にリラックス効果を 得たいという消費者のニーズが高まっ ていることが分かる。 「身体的疲労と精神的・ストレスの 相関関係」「身体的疲労」は活動す るヒトなら誰でも感じるものであり、日 常では意識せずに解消されてしまう ことが多い。しかしながら慢性疲労症 候群など疲労の症状が出ていたら、 その原因を体と心の両面から探って いく姿勢が必要である。また精神的な 問題、例えば職場の人間関係のストレ ス、仕事のプレッシャー、社会性トラブ ルなどで精神的に過度の緊張状態を 強いられたりすると、人間の脳はその 精神状態も「疲れ」として感じとる。脳 日本に於けるEPA・DHA研究の 農学博士 矢澤一良先生 早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学 総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長 日本脂質栄養学会 理事 日本機能性食品医用学会 理事 クリルオイル研究会 会長 クリルオイル振興協会 主席科学顧問 の疲労やストレスといえる精神的疲労 の症状では、肩こりなどの筋肉の痛み や体のだるさ、目のかすみなどが一般 的であるが、この他にも不眠、聴覚や 嗅覚の過敏症、耳鳴り、動悸、呼吸困 難、微熱など幅広い症状が現れる。 進行すると身体的疲労感だけでなく、 怒り、物忘れなどさらに進行した精神 面における悪影響を及ぼすことが多 い。即ち精神的疲労は身体的疲労に 直結する。 「食生活に取り入れたいω3」 ω3系脂肪酸の研究の歴史は長く、 またその機能性に関する論文数もと びぬけて多い。 初期の循環器系疾患の予防(治 療)効果は疫学的研究に端を発して、 EPAは医薬品にDHAは機能性食品 として発展した。その後「ブレインフー ド」として脳機能の研究に進展しまた
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