銀座飛雁閣お取り寄せカタログ2025/26

Interview with 昨年8月、久しぶりに来日した劉教授は飛雁閣を訪れて、 ランチとディナーを堪能し「美味い、やはり上 う ま 手い」と 賛辞を残して、急ぎ、次の渡航先に向けて旅立ちました。 今年の正月、イタリアから帰国したばかりの劉教授を訪ね 上海に出向きました。その目的は、現在、全世界的な規模 で展開されている「中国伝統医学と統合医学の促進」につ いての話題などをお聞きすることでした。 「薬食同源」を起源とした「食」の伝統 Q:今回、中国に来て「尚食」という言葉をよく目にしま すが、この言葉の意味などを教えてくださいますか。 L:「尚食」とは、食 ・ を尚 ・ ぶ、食を 重んじるという意味で、中国古来 からある「薬食同源」と同義の考 え方で「食は健康を保つための薬 であり体調や季節、環境などに応 じて適宜、適切な食を摂ることが 重要」ということを表しています。 明・清時代の宮廷では「尚食局」 という皇帝や皇族のための食事を 作り、その調理法や健康管理を司 る組織がありました。現代では考 えられないほど非常に厳格な食の 規律や高度な調理技法などを学ん だ料理人たちは、ここで料理の腕前 と医学知識を高めるため互いに競いあっていました。 Q:王朝時代が終わり、宮廷料理人たちが料理店を開き、 その店が現在の「名店」になったと聞きましたが……。 L:そうです。宮廷料理人たちは、皇帝や皇族の健康管理 を任され健康維持はもちろんのこと、体調の状態や天候・ 季節などに合った「最善のメニュー」を考えて、一人 ひとりの健康状態に合わせて料理を作っていました。 「尚食局」では最高峰の調理技術や医学の勉強を学んでいた ので、彼らが開いた店は一般人からも垂涎の的となって とても賑わい、それが現在まで続く中国を代表する食文化 の代名詞となっていったのです。 Q:今も、その伝統や理念は伝承されているのですか? L:残念ながら、随分と中身が変わってしまった店が多い ようです。かつてのように料理人の矜持と哲理をもって 調理技術や健康管理などの勉強をしている料理人は中国 だけではなく世界でも稀有な存在となってしまいました。 「上 ・ ・ 手い!」と称される「名店」に、私が心から敬意を表し ているのは、このような理由からなのです。 Q:「上 ・ ・ 手い!」を見抜くことができる秘訣を、ぜひ教えて ください。 L:それは、とてもシンプルなことです。常に正しい食事 を摂る習慣を身につけることです。料理店の良し悪しは スープにあるといわれますが、例えば、飛雁閣の「上湯」 は厳選した食材のみを使用しているのに違いありません。 「薬食同源」を理解した料理人が天然食材だけを使い時間 をかけて、すべての栄養素と旨み、香りなどを煮出して います。これは中医薬の煎じ薬を作るときの手順や下 したごしら 拵え の方法とまったく同様です。これだけでも飛雁閣の中国 料理が本国の名店以上であると評価する所以が、ここに あると私は思っています。 Q:その評価は、中医薬材のこと を熟知した劉教授だからできる? L:その通りです。中医学では医 師が自身の目、鼻、耳などを使って 患者から多くの情報を取り、その 情報を比較・検討して診断します。 私の舌は、特に厳しいからね(笑) Q:では、話題を中国伝統医学に 戻しましょう。まずはその最大の 特質である「診療方法」について 詳しくお聞かせください。 L:中医学では、「全体」と「総合」を 主とし研究しています。医療方法 としては手術、内服薬、外用薬があり、突出したものとして 鍼灸・気功・按摩などがあります。最近は日本でも漢方薬 や鍼灸、按摩(中国式マッサージ)などが日常的な医療の方法 として人気がある治療法となっているようですね。 心理と生理、そして「自然」との相関関係 Q:中医学でいう「全体」について具体的にはどのような 事柄を指しているのかを教えてください。 L:中医学では、東洋の自然観、中国の古代哲学思想や 道教、仏教などからの影響を切り離して論じることはで きません。その基本的な考え方は「自然順一」というもの です。自然に順ずるとは「自然を考える」、「いつも自然と 居る」、「自然の行いをする」ことが含まれています。また 自然という概念には「心理」と「生理」の二つの自然も含 まれていて、人体の中の小宇宙と天の大宇宙は繋がって いると考えています。陰陽の調和、日月の満ち欠け、四季 の温度差など、これらのすべてが生理的な自然と密接に 関係し、心理は自然を深く意識していると考えます。 烏鎮から上海の自宅に戻り自室にてポートレートを撮影 宮廷派中国伝統医学の威信を継承し 独自に研鑽した中医学理論・医療技術・中薬処方を創りだした 44

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